サクラの雑学

Cherryblossom

サクラの語源

Konohana Sakuyahime

① 古事記には、かすみに乗って富士山の上空から花の種をまく、お姫様が登場する。
名は、木花之佐久夜毘売(このはなのさくやびめ・『日本書紀』では「木花開耶姫」)。
この、「さくや」が転化したとする説。
漫画などの作品においても、サクラとともに描写される場合が多い。
② サクラは、うららかに咲く。咲麗(さくうら)が変化して、桜となった説。
③ 「咲く」と、群がるを意味する「ら」で、サクラとなった説。

いちばん有力なのが、稲作文化と結び付けて解釈された説である。
穀物の神をあらわす「さ」と、神様が座るところを意味する「くら」。
つまり、稲の神様の座。
サクラは稲の霊魂が宿る花というわけである。サクラの花の開きぐあいで、
その年の稲作を占ったり、種をまく時期を決めたり、サクラは占いや暦がわりの木で
あったり、花や木立が信仰の対象になったりすることもあった。

さらに「花」という言葉には、古来より「前兆、前触れ」という意味があったと
されている。四季の自然とともに生きる農民にとって、サクラの花が、
重要なサインとして映ったことは疑いようもない。

いずれにしても、サクラが当時の人々の生活に、深くかかわっていたことは間違いない。
それであるなら、満開のサクラの下で、農民たちの祭礼があったとして不思議ではない。
花見の習慣が、サクラを見るために、農民たちが里山へ行くようになったことから
はじまったとする説も有効である。


ソメイヨシノ

Blossom of Cerasus × yedoensis ‘Somei-yoshino’, photographed at Tsuruoka Park 20240413

日本にあるサクラの約8割は、「ソメイヨシノ(染井吉野)」である。
花が大きく、きれいな桃色で、早咲きで、葉が出る前に一斉に開花するのが特徴である。
起源は、主に4つの説がある。
①染井村(現在の東京都豊島区)で人が作った。
②伊豆半島や房総半島に自生がある。
③韓国の済州島の原産である。
④エドヒガンとオオシマザクラの雑種である。

雑種説はサクラを研究したアーネスト・ヘンリー・ウィルソンである。
これを受けて遺伝学者の竹中要博士は、オオシマザクラとエドヒガンの雑種を作り得た
4株はソメイヨシノと同じ姿形のもので、ソメイヨシノは両親がある伊豆半島である
とした。これが、現在の定説といえる。

E H Wilson
ソメイヨシノは雑種だから果実はできない、と長い間信じられてきていた。
雑種であるから、普通は接ぎ木によって繁殖させるから、日本中のソメイヨシノはすべて
クローン植物で、種子ができないはずである。
しかし最近では、ソメイヨシノにも果実と種子ができることがわかってきた。
資料筆者の近田文弘氏は、2012年6月に、東京都江東区の永代通りに近い大横川の
土手のソメイヨシノの並木と、静岡県焼津市内の並木からサクランボを採り、
どちらのサクランボも正常で立派な種子が入っていたそう。


サクラ前線

季節の情報として、気象庁から発表されるサクラの開花予想は、昭和30年から
全国的に始まった。サクラ前線は、沖縄・奄美地方のカンヒザクラの開花から
はじまって、北海道のエゾヤマザクラに行きつくまで、日本列島を北上し続ける。
基本的には、ソメイヨシノが観測対象。
平年は、カンヒザクラの満開は沖縄地方・奄美地方で
2月上旬頃に始まる。 ソメイヨシノの満開は3月終わりに九州地方北部、
四国地方の太平洋側、関東地方の一部から始まり、
4月10日には九州地方、中国地方、四国地方、近畿地方、中部地方、東海地方、
関東地方、北陸西部、4月20日には北陸東部と東北地方南部の地域に達する。
その後、東北地方北部を北上し、5月中旬に北海道オホーツク海側・太平洋側東部まで
達する。

毎年恒例のなんでもないことのように思っているが、開花時期が正確に予測できるのは
対象がクローンサクラであるソメイヨシノだからである。
すべて同一の遺伝子を持っており、九州のソメイヨシノも、青森のソメイヨシノも、
もとをたどれば、ただひとつのソメイヨシノの木にたどりつく。
いつの時代の、どこで育ったソメイヨシノであろうと、
遺伝子レベルでは同一であり、植物的な個性も同じ。よって、一定の気象条件に対して、
同じような反応を示す。だから、全国の開花予測が可能となる。

サクラ前線のほかにも、気象庁からは、全国の気象官署で統一した基準により
うめ・さくらの開花した日、かえで・いちょうが紅(黄)葉した日などの
植物季節観測を行っている。
植物季節観測は、観測する対象の木(標本木)を定めて実施されている。
観測された結果は、季節の遅れ進みや、気候の違い、変化など総合的な気象状況の推移を
把握するのに用いられる他、新聞やテレビなどに利用されている。
例えば、地球の温暖化を実証するなど、時とともに変化、成熟することのない植物で
あるからこそ可能な観測である。


◇参考・引用文献◇



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