シクラメン

Cyclamen
サクラソウ科シクラメン属



「シクラメン(Cyclamen)」は、サクラソウ科の多年生球根植物である。
同品種のなかですらかなりの個体変異があり、分類者によって分類方法が少しずつ
異なっている。このため、見解は必ずしも一致していないが、原種は15種~20種程度
存在しているとされている。
「シクラメン」の名は、ギリシャ語で螺旋(らせん)を意味する、
「キクロス(Kyklos)」に由来する。これは、この花が種子をつくった後、花びらが
螺旋状に巻いた形に変形してくることによる。(ただし、キクラメン・ペルシカムなどの
一部品種についてはこのような性質はほとんど見られない。)

シクラメンの園芸種は、シリアからギリシャ原産の「キクラメン・ペルシクム
Cyclamen persicum)」1種のみを改良したもので、ヨーロッパで園芸種として
発展してきた。17世紀初期の史料によると、いくつかの種が、16世紀にはすでに
地中海沿岸諸国からフランス、イギリス、オランダなどの国々に入っていたという。
シリアからギリシャとは、日本で例えると、北海道の北端から九州の北部までが含まれ、
南北にかなりの広範囲で分布しているのがわかる。
ヨーロッパに入った当時は観賞用というより、薬草としての意味があった。
シクラメンに含まれる、「シクラミン」という成分が、実際にヨーロッパで下剤などに
利用されていた。

ヨーロッパで最初に栽培された原種は、ヨーロッパ南部から小アジア西部に分布する
「キクラメン・ヘデリフォリウム(C. bederifolium)」や、ヨーロッパ
中・南部原産の「キクラメン・プルプラスケンス(C. purpurascens)のような、
耐寒性のある種であった。

現在の栽培シクラメンの代表である、「キクラメン・ペルシクム」は、
1620年ごろにはすでにフランスで栽培されていた。その後、19世紀ごろの、
フランス・イギリス・オランダ・ドイツで、栽培や改良が行われたことにより、
広く栽培されるようになった。シクラメンが日本に渡来したのは、明治時代初期と
いわれているが、詳しい導入の経緯については、明らかになってない。

一般に、シクラメンという名が定着しているが、かがり火のように見える華の形から、
牧野富太郎により命名された「カガリビバナ」という和名も存在する。

品種によっては香りが豊かなものもあり、アルジェリア原産の「キクラメン・アフリカ
ヌム(C. africanum)」などはスミレの香りが、「キクラメン・ペルシクム」などは、
スズランの香りがする。とくに、「キクラメン・プルプラスケンス」の甘い香りは
だれにも好かれているが、現在の園芸品種には、長年の品種改良によって芳香性は
ほとんど失われている。

一般に自生種には豪華さはないが、清楚で野趣に富み、多くの種に感傷的価値がある。
なお、現在はワシントン条約によって、すべての原種シクラメンは国際的な商取引が
禁止されている。


◇主な品種と花期◇

<夏から秋に咲くもの>

<冬から春に咲くもの>


◇参考・引用文献◇



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